2008年01月10日
9カ月間、お腹の中で胎児を育てて、そのまま亡くなり、普通に産んだ。授乳の準備ができていたお乳を薬で止めた。そして何もなかったように夫婦二人の生活が戻ってきた。お骨を入れた真っ白の包みがそこにあることを除いて。
これは何なんだろう。私の身に起きたことが一体何だったのか、しばらく理解できなかった。
一人で食事をすること。テレビもラジオもつけずに無音でいること。好きな仕事に没頭すること。大きなお腹を抱えた女性や赤ん坊を連れた家族を景色の一部として眺めること。バスに乗ること。喫茶店でランチをとること。それまで何でもなかったことが苦痛になった。
楽しい予定をめいっぱい詰め込んだ休日の終わりに、夫と私に同時にすとんと降りてくる寂しさは殊の外きつい。それは昼の普通の沈黙ではない。助手席に座る夫にその寂しさが降りてきたことがわかる。好きな者二人でいて、とても寂しい。どうしようもない。なんとか部屋に灯をともし、お茶を沸かす。
一人でいること。二人でいること。寂しい。
「それは親になったってことよ」とある人が言った。昔から、人に寄りかからない孤高の人という印象のある人だ。子どもを新しい家庭に送り出して、気ままに暮らすその人が、そういう風に考えていることを知らなかった。
私は母親になり、そして、娘を亡くした。 そうか。そういうことか。
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