2017年08月12日
私の娘が生まれて今日で10年だ。彼女はあと2週間で臨月というときに私のお腹の中で静かに呼吸を止めた。そして生まれてきた。
分娩後の5日間は、周囲にそれとなく私を1人にしないようにする雰囲気があった。面と向かって言われたわけではないけれど、「万が一のことがあったらいけないから」、ということだったのだと思う。そんなことは経験したことがなかったので少し驚いた。でも確かにそのとき、私はこれからどうやって生きてゆけばいいのかわからなくなっていた。
10年後の今日、私はずいぶん広くて明るいところにいる。自由で元気で力があって、明日が来るのが楽しみで仕方ない。
けれども私はいつでも帰ることができる。夫と私と、保冷剤をまとった美しい赤子が眠る世界の果てみたいなあの病室へ。
10年経った今でも、私の一部はまだあの部屋にいて、娘の顔をのぞき込んでいるのだ。
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